お笑い考察論

好きな芸人やコントを考察するという、無粋なブログ

ラーメンズ『映画好きのふたり』

2000年代のお笑いシーンで、コント、ひいてはお笑いという概念そのものを覆した、孤高の芸人・ラーメンズ

 

そんな彼らに魅了され、高校では同級生に対して彼らの笑いを熱弁し、布教活動に勤しんだほどの熱心なラーオタである筆者ですが、そんなラーメンズとの初対面は、このコントでした。

 


ラーメンズ『home』より「映画好きのふたり」

 

このコントは第5回公演「home」で披露された"完全版"と、爆笑オンエアバトルのチャンピオン大会で披露された"オンバト版"の二種類があります。私が先に見たのは"オンバト版"の方です。こちら。

 


ラーメンズ(爆笑オンエアバトル2000チャンピオン大会)[201KB]

 

いやー、まったく違いますね。もはや別物。

"オンバト版"の方は、かなり低評価である201kbと散々な結果。リアルタイムで観た私も、「あまり面白くないな」と思っていました。(仕方ない。当時まだ7歳!)

が、"完全版"を見た後に見ると、それも納得してしまいます。

 

すっごいはしょられてるんだもの!

 

"完全版"の方の尺が15分あるのに対して、"オンバト版"の方は5分ちょっと。3分の1しかありません。いわゆる、テレビサイズってやつです。導入、設定、展開、オチに至るまで、様々な部分が大胆にカットされてしまっています。小林さんもかなり苦心した事でしょう。

 

元々、ラーメンズのコントの本質は、「バカふたりによるどこか歪んだ日常風景の描写」であり、おかしな空気を積み上げていく事によって笑いを生み出していく、というものです。このタイプのコントは、ハマれば永続的に笑いを起こすことが出来る反面、瞬発力にかけ、コントの尺はおのずと長くなります。尺が限られてしまうテレビとは相性が悪いので、ラーメンズは主戦場をテレビにしませんでした。

 

このコントの本質もそれだった為、尺の限られる"オンバト版"は、いまひとつ笑いに結びつかなかったんだと思います。

(もちろん、元より万人ウケしない作風が当時の審査員にハマらなかったという意見もあるでしょうが、計量時にあがった「え〜」という声が、あの低評価に対しての衝撃を物語っています。)

 

舞台系芸人とネタ番組の相性の悪さを長々と語ってしまいましたが、このコントは純粋に面白いと思います。お世辞にも良い出来とは言えなかった”オンバト版”でさえ、幼い私の心に強烈な印象を与えた訳ですし。

 

ラーメンズのコントには所謂ツッコミ・ボケという概念は存在しません。

勿論そういう役割を持った台詞があることにはあるんですが、基本的には会話の中で起きる自然なやりとりで片付けられます。このコントに限らず、彼らの初期のコントにはこういう、他愛もない会話から生まれる大学生の内輪的なノリを、緻密な脚本構成で笑いに昇華したものが、多く見られました。

 

さて、ネタ考察に参りましょう。

このコントには、3つの大きな要素が含まれていると考えます。

  1. 映画のよくあるシーンを組み合わせた、変則的なあるあるネタ
  2. ごっこという非日常空間に入り込んでいる男達の世界と、彼らが本来存在している日常の世界という入れ子構造
  3. 「ひょうたん醤油入れ」など、大喜利的な言葉のチョイス

 

まず重要なのは、紛れもなくふたりの演技力です。

映画ごっこで見せる、誇張しすぎるわけでもなく、それでいてパロディと分かる仕草や喋り方。(たまにやり過ぎるところもありますがw)

彼らの技術と魅力が遺憾なく発揮されていて、それだけでも面白い。

 

そこに+α、2の状況設定が加わります。

この設定があるからこそ、1が単発の笑いにならず、非日常が日常に引き戻された際に生まれる状況の笑いを増幅させるファクターにもなるのです。

("オンバト版"ではこの2の要素自体がカットされていた為に、観客側もいまひとつ乗り切れなかったんだと考えられます。)

 

また、ラーメンズのコントの美学として、引き算の構成があります。状況などを多く説明しない。観客に不足した部分を想像させることで、よりコントの世界にのめり込ませるテクニックです。

重要な笑いどころである2がはっきりする部分は、ふたことで説明されます。

 

 

「となり?」

「壁、薄いんだ。」

 

 

シンプルで的確、かつ会話として自然な受け答えです。

 

また、この会話の前後で、彼らを日常に引き戻す隣人の存在も示唆されます。

見えざる第三者を抜群の演技力で想像、理解させる手腕は流石ですね。

(この設定と手法はバナナマンも取り入れていますが、彼らも演技力が突出しているので、やはり面白いです。)

 

とまあ、初回にしてはマニアックでしたが、状況設定の妙が光る名作コントでした。