愚者、ぼんやりと月へ行く。

のらくら、いこうよ。

シアターシャインは何処。

本日は、前回のネジマキトカゲの公演でふざけ倒してくれたヘンテコおじさん(悪意はない)西恭一さんの劇団、THE SOUL BEAT AVE.の公演へと観劇に向かう予定だった。劇場はシアターシャイン。最寄駅から新宿に向かい、そこから中央線に乗り変えて阿佐ヶ谷へ…となったところで、ふと思った。

 

「あれ?シアターシャインって阿佐ヶ谷だったっけ?」

 

前に一回行ったことある劇場だと、ろくすっぽ調べもせずに意気揚々と向かっていたのだが、そうひとたび思い始めたらば最後、言いようのない不安に襲われ始めた。マイナス思考人間の悪いところだ。

しかもここは劇場密集地として名高い杉並区。中央線沿いには主に中野、高円寺、荻窪といった町の形状も似ている(区民の方には申し訳ないが、県外の人間には同じに見えるのだ)地域が連なっており、ややこしい事この上ない。

せめて『座・高円寺』のような分かりやすい劇場名ならば迷うことなく降り立つ事が出来るのに、劇場名は特に具体性のない『シアターシャイン』。もうお手上げだ。

僕は、とりあえず阿佐ヶ谷に降りる事を決めた。

 

ここまで読んだ方はまず間違い無くこう思うだろう。

「しのごの言わずに調べなさいよ。」と。

 

ただ僕の中には、「シアターシャインのは阿佐ヶ谷にある劇場」という最初に導き出した答えがある。ただこれが何故かふと湧き上がって来た懐疑心によって揺らいでしまっているだけなのだ。

勿論、スマホで調べれば一発でシアターシャインの正確かつ詳細な場所がほんの数秒で導き出されることだろう。しかし今の僕にとって、その選択肢を選ぶ事は「負け」を意味するのだ。

もはやこれはプライドの戦いになっている。もし阿佐ヶ谷で合っていれば、僕は己のちっぽけな懐疑心に打ち勝ち、尚且つ記憶力が衰えていない事を証明する事が出来る。もしも間違っていたとしても、最初に決めた答えを覆さなかった、折れなかった、試合には負けたが勝負に勝った的な精神スタンスは保つことは出来る。

どちらに転んでも、僕にとってはこの選択肢が、正解だ。

 

そんな事を考えている内に僕は阿佐ヶ谷を通り過ぎ、荻窪に来てしまっていた。

 

結果、シアターシャインは阿佐ヶ谷にあった。ぽつんと佇んでいた。

特に達成感も充実感もなく、普通に観劇した。

 

THE SOUL BEAT AVE.『WHAT’S GOING ON(仮)』

映画やら文学やら哲学と言ったマニアックな知識がふんだんに盛り込まれた膨大な量の台詞を淀みなく語り出す西さん含むおじさん達は、僕にはとても輝いて見えた。やっぱりね、おじさんが一生懸命(必死という訳ではなく、あくまで飄々と)何かをやってる姿が一番面白いし、訴えかける何かがある。物語自体は正直良く分からなかったのだけれど、それでもグッと来たというのはそういう事なんだろう。

 

僕がおじさんになっても、ああやってずっとふざけていられたら最高だと思う。そしてシアターシャインの場所は忘れないでいたい。阿佐ヶ谷。